薬機法(旧薬事法)違反には厳しい罰則がある~広告規制と効能・効果について解説

薬機法といえば、サプリメントなどの広告表現などで気をつけなければならない規範、罰則のある法律として知られています。法改正によって「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」となる前は薬事法でした。

もっとも、長く呼ばれていたこともあり、現在でも薬事法と呼んでいるケースが少なくありません。この記事では、薬機法で違反しやすい広告規制と効能・効果の表現について解説します。

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薬機法(旧薬事法)の規制に違反すると罰則がある

薬機法(旧薬事法)は医薬品等を対象として規制などを行う法律です。薬機法の規定に違反すると罰則を科される可能性があります。医薬品等に含まれるのは、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品です。

そのため、罰則の対象となる人といえば、医薬品等を製造したり販売したりしている業界関係者や、無許可で製造販売する人が思い浮かぶかもしれません。指定薬物の製造等の禁止規定違反や、無許可での製造販売、薬局開設など、業界内部における禁止や許可などに関する罰則が多いことはたしかです。

しかし、薬機法に抵触する可能性は業界の外にいる人にもあります。

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一般人でも注意したい薬機法の広告規制

薬機法がここまで一般に注目される存在になった理由のひとつに、業界関係者ではない人(以下、一般人)でも罰則の対象になりやすい点があります。一般人でも注意したいのは、薬機法の広告規制です。薬機法では第10章で医薬品等の広告について規定しています。

まず、第66条の医薬品等の誇大広告等の規制が重要です。第66条の条文の先頭には「何人も」と書かれています。つまり、業界関係者や販売関係者だけでなく、誇大広告は誰がやっても違反になるということです。たとえば、ある医薬品等について実際の効能・効果を上回る効き目があるかのような広告をすれば、誇大広告として罰則を科されることになりかねません。

ただし、承認された医薬品等であれば正規の効能・効果が明示的にうたわれているため、誇大広告は起こりにくいともいえるでしょう。次に、第67条では特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限を定めています。

がんなどの特定疾病を対象とした医薬品等の広告に関する規定で、こちらは一般人にはあまり関係がないといえそうです。一般人でも薬機法違反になりやすいとはいうものの、業界関係者以外で広告規制によって違反を問われ罰則を科される可能性が高いのは、広告関係者やアフィリエイター、ブロガーやインフルエンサーがメインとなります。

広告業界やアフィリエイトと関係なく、記事を書くこともない人は気にする必要がありません。しかし、少しでも関係しているなら、薬機法の規制内容をしっかりとチェックしておく必要があります。

薬機法の第68条がキーポイント

薬機法では「医薬品等の広告」として規定されていることから、医薬品等ではない物品の広告には関係なさそうに思えるところです。ところが、「薬じゃないから薬機法は関係ない」とはいえません。食品であるサプリメントなどの広告は、キャッチコピーや説明文が行き過ぎてしまい、薬機法違反になりやすいといえるでしょう。

薬機法の第68条では、承認前の医薬品等の広告を禁止しています。この承認前の医薬品の解釈が薬機法違反と深く関わっています。まず、医薬品等ではない物品は効能・効果をうたえません。たとえば、ダイエット食品は食品であって医薬品等ではないため、痩せるといった効能・効果を広告できないことになっています。

ここからが重要なポイントですが、ダイエット食品の広告で効能・効果をうたってしまうと、当該ダイエット食品は薬機法が対象とする医薬品等として扱われてしまいます。効能・効果をうたうということは医薬品等であるということです。

ところが、そもそも食品であるため医薬品等としての承認を受けておらず、承認前の医薬品等という判断になります。したがって、承認前の医薬品の広告を禁止する第68条により薬機法違反となるのです。「薬機法は医薬品等に関する規制法だから、薬じゃない食品なら対象外だろう」と勘違いすることで違反になるケースは少なくありません。

しかし、先ほど述べたように効能・効果を広告した時点で違反になり得る点に注意が必要です。薬機法第66条と68条に違反した場合の罰則は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれを併科となっています。

薬機法における広告の定義とは?

薬機法が定める医薬品等の広告の規定に違反しないためには、大前提として広告の定義を知る必要があります。医薬品等に関する何らかの情報発信が広告にあたるのか否かがわからなければ、違反を避けることが難しくなるかもしれません。

広告の定義については、厚生労働省の課長通知「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」が参考になります。この通知は薬事法時代に出されたものですが、薬機法においても考え方は同じです。薬機法においては、以下の3要素を満たせば広告と判断できます。

・顧客を誘引する意図が明確・特定医薬品等の名称が明示されている・一般人が認知できる状態まず、顧客を誘引する意図が明確である点は、広告として欠かせないものです。顧客に医薬品等を買ってもらおうとする意図がなければ、広告とはみなされません。

次に、特定医薬品等の名称が明らかな場合のみ、広告該当性があります。名称が不明瞭では、何を買ってもらおうとしているのか、何を買えばよいのかわからないことから、妥当な考え方だといえるでしょう。一般人の認知が求められている点は、拡散によって効果を期待できる広告の性質を考えればもっともだと思えます。

ただし、一般人が何もしなくても目に触れるケースだけでなく、自らアクセスすることで目に触れるケースも認知できる状態に含まれている点に注意が必要です。

薬機法違反になる虚偽・誇大広告の表現とは?

薬機法は誇大広告を禁止していますが、どこからが誇大広告となるのかがわからなければ、意図しない違反が発生してしまいます。もっとも、事実ではない盛った表現はすべて誇大広告になり得ると考えておけば間違いはないでしょう。

たとえば、以下のような表現が該当します。・誰でも効果を得られる・飲んですぐに効く・医師がオススメ・効能・効果を事実より大きく見せるどのような医薬品等であっても、万人に効果があるものはないといえます。したがって、誰でも効果を得られるという表現は、虚偽・誇大な表現です。

同様に、効き始めるまでの時間も個人差があり、飲んですぐに効くという広告表現は原則として認められません。

また、医師がオススメと書いてあれば、実態とは関係なく専門家が効果を保証しているなら素晴らしいものに違いないと受けとられかねないため、薬機法違反になり得ます。

効能・効果を事実より大きく見せる表現がダメであることはいうまでもないでしょう。

たとえば、改善が見られた人数を実際よりも何割か盛って表示するなどです。

効能・効果の判断基準

薬機法違反にならないためには、虚偽や誇大な広告表現をしないことに加えて、効能・効果の適切な表現と医薬品等ではない物品で効能・効果をうたわないことが重要です。それでは、効能・効果の判断基準はどこにあるのでしょうか。

厚生労働省が出している「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」の中で、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器それぞれについて示されています。たとえば、化粧品は医薬品ではないため治療を想像させるような効能・効果は表示できません。

「シミを消す」などと表示すると違反となります。一方、現状維持を示す「皮膚をすこやかに保つ」といった表現は認められています。非常に細かく定められているため、必要に応じて関係する箇所をじっくりとチェックするとよいでしょう。

薬機法違反で罰則を受けないために普段から表現には注意しよう

医薬品等はもちろんのこと、健康食品やサプリメントの広告であっても、消費者に誤解を与えるような表現は避けなければなりません。不適切な広告表現が薬機法に抵触する場合は、違反に対する罰則が科される可能性があります。

罰則の内容も軽いものではなく、下手をすると懲役刑です。関係する広告を作ったり、記事を書いたりすることがあるなら、薬機法違反で罰則を受けることがないよう、普段から基準をチェックして表現には注意しましょう。